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見えないものを見ようとして、顕微鏡をのぞきこんだ。

ある理系院生の備忘録 ~RiskとBenefitの狭間に揺れて~

アメリカ、ニューオーリンズにてCD押し売り詐欺に遭遇。

先日、国際学会のためにアメリカ、ルイジアナ州のニューオーリンズに滞在しておりました。Jazz と Seafood が有名な、活気あふれる街です。

街の中ではいたるところで楽器を持って演奏しており、音楽を愛している様が見て取れます。

 

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しかしながら悲しいことに、そのJazzを利用して、悪質な詐欺行為が行われておりました。私はその詐欺に遭遇しました。

※ ぎりぎりのところで逃げ出せたので、目立った被害はありませんでした。(肩を殴られたくらいです。いたかった。)

今回はその一連の流れについてご紹介したいと思います。この詐欺行為自体は比較的有名なのですが、手口内容に関してはあまり情報が見当たりませんでした。そこで、私が実際に受けた手口と集めた情報をまとめ、思いつく対策方法をここに記していきたいと思います。

 

まず、今回遭遇した詐欺行為は「CDの押し売り詐欺」と一般に言われるものです。

http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure.asp?id=221

こちらの外務省が公開している海外安全ホームページの「アメリカ」のページ、「ニューヨーク」の項目の「(ウ)詐欺・恐喝被害」の細目にある「CDの押し売り」には、 
"繁華街を歩行中に,犯人からあたかも無料配布のように見せかけてCD等を手渡され,受け取ると代金(100ドル前後)の支払いを要求される。”
と記載されております。

実際に遭遇した方もいらっしゃるようです。

http://4travel.jp/overseas/area/north_america/america-new_york_state/new_york/tips/11990681/

多くのCD押し売り詐欺の場合、このように「無料配布を装った」形式をとるようですが、私が遭遇したのはもう少し狡猾な手法でした。

実際に無料配布を装った押し売りの場合、差し出されたCDを手に取る旅行客は少ないと思います。日本国内のティッシュ配りをことごとく受け取る私ですら、間違いなく無視します。そんな私が、後一歩間違えれば、間違いなく代金を支払う羽目になってしまったであろう手口が以下の内容です。

 

 

まず、被害を受けた場所と時刻についてお話します。
ニューオーリンズの中には、観光客が多く、有名な観光名所となっているFrench Quarterというエリアがあります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC

多くの観光ガイドにも「比較的治安がよく、安心して観光できる場所」と記されております。私はこのFrench Quarterのエリアから1本離れた通りに面したホテルに滞在しておりました。治安はFrench Quarter内部と大して変わりません。詐欺に遭遇したのは、このFrench Quarterの端とホテルの間、僅か100 m前後の区間です。

また、ニューオーリンズのFrench Quarter以外のエリアであっても、昼の治安は比較的よいとされています。私が遭遇したのはFrench Quarterからホテルに帰る途中の夕方4時30分でした(サマータイムのない日本では午後3時30分にあたります)。まだ明るく、多くの人が通りを歩いている時間です。観光客も大勢います。(逆に言えば、観光客が多い時間を狙っているのでしょうけど。)

まとめますと、私が詐欺に遭遇したのは夕方4時30分、French Quarterでお土産を購入し、ホテルに帰る途中の道でした。そしてそれは、Jazz Barの前でした。

 (今回、たまたま黒人に狙われたため、黒人A、黒人Bと表記しておりますが、決して黒人の犯罪者率が高く、黒人に注意しろというわけではございません。むしろ私は陽気な黒人も、誇りを持った黒人も好きです。)

 

私がホテルに向かってJazz Barの手前を歩いていると、ちょうど2人の黒人が仲良く話をしながらそのJazz Barから出てきました。私がその横を通り抜けようとしたとき、

黒人A:Excuse me. Would you take our picture?
   (すみません、写真をとってもらえませんか?)

 

その言葉に私は立ち止まりました。私は基本的にカメラが好きなので、撮影を頼まれたら断りません。そのいつもの感じで立ち止まり、私は

私:Pciture? O.K. Of course.
    (写真ですか? もちろん、いいですよ。)

と答え、彼らは私にケータイを差し出してきました。そしてカメラを構える私に

黒人B:Please take picture with this one. We love Jazz!
         (これ=ジャズバーの看板 と一緒にとってくれないか?
     俺達、ジャズが大好きなんだ!)

的なことを言ってきました
(文章は正確じゃないかもしれませんが、内容はこんな感じでした。)

 

私はそれに了承し、いつもの通り、Say cheeseといいながら、横向きと縦向きの写真を2枚撮影しました。そして、ケータイを渡して、

 

私:Could you check pictures? 
     (写真の確認してもらっていいかな?)

黒人A:Great! Thank you.
          (すばらしい! ありがとう!)

と、いつものやり取りをしました。

そして、私がホテルに戻るために踵を返そうとした瞬間、

 

黒人A:Where are you from?
           (君はどこから来たんだい?)

私:Japan. I came from Japan.
       (日本だよ。日本から来たよ。)

と、私の出身地を聞いてきました。よくある会話です。

 

黒人A:Japan! Kei Nishikori! He is good tennis player!
       (日本! 錦織圭! 彼はいいテニスプレイヤーだよね!)

私:Oh! You know Nishikori!?
     (え! 錦織のこと知っているの!?)

黒人B:Yeah! We know Kei Nishikori. He is very famous.
    (もちろんさぁ! みんな知っているよ。彼はとても有名なんだ。)

この時、彼らが日本人選手のことを知っていて、私は心なしかうれしくなっておりました。

 

私:Do you know any other?
       (他に何を知っているの?)

黒人A:Matsui! Ichiro! ah...Tanaka!
       (松井! イチロー! あー・・・田中!)

メジャーリーグだけに、非常にメジャーな選手ではありますが、日本の野球選手を知っていることは、野球好きな私にとっては非常にうれしいことした。

 

黒人B:What your name?
             We are Green Night(おそらくバンド名).
             Tonight, we will play our song in this bar.
            (君の名前はなんていうんだい? 
             俺達はグリーンナイト。
             今晩、このジャズバーで演奏するんだ。)

私:Really!? Can I come here in tonight?
     (本当に!? 私も来ていい?)

黒人A:Sure! So, what your name?
           (当たり前だろ。で、名前は?)

 

このように、彼らはJazzの演奏家であること、そして2人でバンドを組んでいることを私に伝えてきました。私は、「ここのJazz Barの看板と一緒に写真を撮ったのは、ここで演奏するのが初めてで、記念に撮影したのかな?」とか推察していました。この時、名前を聞いてきたことに関しては「今晩の演奏に誘ったからこそ、客の名前を知りたいんだろうな」くらいに軽く考えておりました。(それに加えて、向こうが名乗ったからには、自分も名乗るべきだと謎の武士道精神も発揮されておりました。)

 

私:I'm ■■■(私のフルネーム) O.K.?

そして、私は自分の名を名乗りました。しかし、私の名前が聞き取りにくかったようで、

 

黒人A:An? What you say?
          (え? 何て言った?)

と強めの口調で言われました。いつものことだったので、私はポケットの中にあるメモ用紙とペンを取り出してスペルを書いて見せようとしました(私の名前は外国人にとって発音しにくく、聞ききとにくいため、いつも知り合った外国人には紙に書いてスペルを見せておりました)。しかし、私が紙を取り出すよりも早く、

 

黒人A:Write your name, here.
           (ここに名前書いて)

私にマジックと何らかの物体を渡してきました。そう、CDです。はじめは、紙かなんかを渡してきたのかと思い、受け取ってすぐに書こうとしましがた、明らかに紙ではない物体に違和感を感じ、

 

私:No problem. I have paper.
      (いや、いいよ。紙持っているからさ。)

と、紙を取り出してを見せました。しかし、その黒人は

 

黒人A:You! write! here!
          (こ・こ・に・書・け。)

とCDを指差しながら、強めの口調で言ってきました。

 

私:Wh...Why CD-rom? I have paper......
       (な、なんでCD? 紙持っているのに・・・・・・)

黒人A:Write your name! here!
          (お前の名前を書け! ここに!)

このときに、彼が持っていたもう1本のマジックで肩(二の腕と言われるところ)を何度か殴られました。私は、ようやく何かがおかしいと感じ始めました。もう一人の黒人は少し離れたところで、会話に入ることなく私達の動向というより、おそらく私が不審な動きをしないように見ておりました。なぜCD-romに私の名前を無理やり書かせようとしているのか、この時、理由はまるでわかりませんでしたが、このときに私の脳によぎったのは、

(やべぇ、よくわかんないけど意思の疎通が出来てない。それはいいとして、先生をホテルで待たせている。学会のRegistrationには5時に行く約束だった。さっき4時半だったから・・・・・・・時間がない!)

 

私:I...I'm sorry! I must hurry up!
    (ご、ごめん! 急でいるんだ!)

黒人A:Wait!
          (待て!)

と言って、再び私の肩を掴んできました。しかし私は、彼らよりも先生を待たしてしまう可能性があること、学会のRegistに間に合わなくなってしまう可能性があることの2点を恐れて、

 

私:My boss is waiting now!!
    (うちの先生が待ってんだよ!!)

とだけ叫んで、腕を振り払い、即座に振り向き、ホテルにダッシュで入りました。多分、100 m 14秒くらいだったと思います。とくに追われたり、叫ばれたりはしませんでした。ホテルの部屋に急いで戻ってようやく安心できました。

後に学会で知り合った先生方が「ボス」と言ったのが効いて、開放してくれたのではないかとおっしゃっておりました。私は教授や上司の先生のことを時々、ボスいいます。プロフェッサーだと少し長いので。もし、それに効果があったのだとしたら、本当にラッキーです。

こうして私は、なんとかCD押し売り詐欺から逃れることが出来ました。

 

 

後にアメリカの治安について調べた結果、一つだけ非常に似たケースを発見しました。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120525/p3

ここの著者も同様に、名前を聞かれ、その名前をCDに書かれております。つまり、私が遭遇した黒人らは、私の名前をCDに書き、あるいは私に書かせ、無理やりCDを売りつけようとしたのだと考えられます。適当な名前を書いて売りつけられたら、防ぎようがなかったかもしれません。(この黒人らにも何かしらのプライドがあるのか?)この時は、お土産買った後だったので、財布の中身が残り2ドルしかありませんでした。かばんの中には80ドルほどありましたが、それを見せていたら全部とられていたかもしれません。

 

さらに、この記事の筆者の場合、被害にあったのは屋内のようです。私は屋外だったからこそ、出口を固められることなく逃げられたと考えられます。この点もラッキーでした。

 

Jazzの街で、Jazz好きであることを狡猾に利用し、観光客に近づき、金銭を騙し取ろうとする。とても悲しい出来事だと思いました。(ちなみに、Jazzという言葉には、音楽のジャンルとしての意味以外に、“盛り上げる”、“楽しませる”という意味も含んでいるそうです。)

 

また、私はカメラも写真も好きで、写真撮影を頼まれたら、必ず撮影してあげていました。しかし、このような詐欺に遭遇した後では、写真撮影をしてあげることが恐怖にしか感じなくなってしまいます。もちろん、それなりに見極められるとは思いますが、そもそも写真撮影を了承しなければ、今回のような思いをしなくてすんだわけです。話しかけられても全部無視すればいいわけです。どんなに困っている人が声をかけてきても手を差し伸べなければ、だまされることはありません。そういう考えが生まれてしまいます。悲しいことですが。

 

先ほどの記事にも書いてありますが、少しでも街へ、そこに住む人々へ愛情を持つのなら、このような行為をやめてほしいと思います。

 

 

 

一方で、日本も例外ではなく、世界各国の都市や街でこのような詐欺が横行しているのは事実です。実際に体験した手口、調べた情報を参考に、こうした詐欺から自分の身を守るための術を私なりに考えてみました。ぜひとも皆さん、参考にして、二度と私のような恐い思いをしないように未然に防いでほしいと思います。

 

1.話しかけられても徹底して無視する

話しかけられた人を犯罪者か本当に困っている人か判断できる自信のない人は、コレが一番です。通り魔やスリのような突発性の高い犯罪以外はたいてい防ぐことが出来ます。本当に困っている人には申し訳ないですが、犯罪者かそうじゃないか見極められる人に助けを求めるようにしていただきたいと思います。

 

2.自分の名前を決して言わない

自分の名前というのは、非常に重要な個人情報です。海外では手書きのサインが重要な証明になるように、詐欺を成立させるために名前の記載というのが重要な要素になるのかもしれません。自分で書くことをもちろんのこと、他者に言うことも控えたほうがよいでしょう。

 

3.ダミー財布等を複数個用意する

この方法を行っている人は多いと思います。いざ、金銭を払わなければならない状況に陥った場合、財布の中身をありったけとられるパターンがやはり多いです。面倒かとは思いますが、リスクを分散させるためにダミーの財布を多数用意して、持ち金を分散させておくといいでしょう。ただ、最近では、この方法が詐欺師の中でも知れ渡り、財布の中身の量ではなく、最終的に回収した金額で引き際を判断する場合も多いそうです。つまり、観光客なら最低でもコレくらいは持っているという想定のもと、金銭を要求し、財布複数個分を奪うそうです。その場合、さらに数を増やして分散させるか、安心できる質の高いホテルの金庫に預けるなどするしか守る方法がないかもしれません。

 

4.そもそもお金をもっていそうな格好をしない

これは私の先生の持論ですが、ぼろぼろのリュックに、ジャージのようなださい服装に加えて、ビーチサンダルのようなお金を持っていなさそうな服装にして装飾品を身につけなければ、被害にあわないそうです。同じ観光客でもやはり狙うのはお金を持っていそうで気が弱そうな人です。女性はつらいかもしれませんが、狙われたくなければ、狙いたくない格好をすることが一つの有効な防衛策といえます。お土産の袋を手に持つなんてもってのほかです! ← 戒め

 

5.手口を事前に知っておく

海外に行く際に、最初はこのような詐欺の手口を調べる方は多いかもしれません。しかし、慣れてくると、いちいち調べて読み込むことが面倒になってくるかと思います。
その一方で、詐欺の手口は常に変化あるいは進化しており、自分も予想しないような狡猾な手口で犯行に及んできます。
例 http://dailynewsagency.com/2015/06/23/40-tourist-scams-7qa/

定期的に前知識を更新して、目の前にいる人が自分を騙そうとしているのか否か、自らの頭で判断できるようにすることもまた、旅行を楽しみつつ、犯罪に巻き込まれないようにするためには重要だと思います。

 

 

 

犯罪など、なくなることが一番だとは思いますが、残念ながら、どこに行っても一定数の愚かな人間が善良な旅行客や市民を騙し、金銭を奪い取ろうと狙っています。このような被害に会うと、せっかくの楽しい旅行も台無しになりますし、好きで来たはずのその国を、その街を嫌いになってしまうかもしれません。みなさまも、旅行に行く際や見知らぬ土地に訪れる際はくれぐれも気をつけてください。