デンマーク留学記 ~10日目、煩雑な事務手続と献身的なサポート~

学会も終わり、デンマークに滞在して10日目にして、ようやくお世話になる研究機関に足を運ぶこととなりました。初日ということもあって、期待と期待と、そこにちょっとの寝不足でテンションが多少ハイになっておりました。そのせいもあってか、終わってみたら多量の作業をこなし、くたくたになって、すぐに寝てしました。少々長いですが、せっかくですので、この1日を時系列順に書き記しておこうと思います。

 

8時、研究所に到着。約束は9時集合でしたが、道に迷ったときの保険のために早めに出たら早く着きすぎてしまいました。早く出たときほど迷わないのはあるあるですね。当然、中には入れないので、近くの公園のような場所のベンチで腰をかけて休んでいたところ、なんとラボのトップが目の前に。突然の遭遇に、向こうもこっちも驚いておりましたが、一緒にラボへ向かうことに。ラボに到着後、二ールというシニアリサーチャーを紹介してもらいました。(実は、先の学会のディナーで同じ席だったので面識あり。しかも、彼は発表受賞者だったので、とくに記憶に残っていました。)ここから先、ほとんどの行動をこのニールさん(42歳、2人の娘もち。6ヶ月前にラボに赴任したばかりで、もともとは企業の研究者だったらしい。日本の人も知っている有名な食品企業で食品の安全性関連の研究をしていたようです。)と一緒に行いました。めっちゃやさしくて、いつも自分を気にかけてくれるいい人です。話も面白いし、趣味もあう。

9時15分から行われる発表まで、まだ1時間ほどあるということで、二ールさんが建物の中を紹介してくれました。地下から3階まで、会う人会う人に自分のことを紹介しながら各部屋を見せてもらいました。ひとつの研究チームが、どでかいワンフロアを使い、技術員、試薬の安全性管理スタッフ、動物実験の管理スタッフ、通信・電子機器の管理スタッフ、その他様々なことを手伝ってくれるスタッフが数名ずついて、研究者が研究のみに専念できる環境が整っていることに少々うらやましく思いました。日本も試薬管理とか大学単位じゃなくてラボ単位でスタッフを用意してくれればいいのに。


そんなこんなで発表の時間が来たので、ミーティングルームへ。初めて40分の時間を発表しました(日本でも最長で30分だった気がする・・・・・・)。後半はだいぶスタミナが切れていましたね・・・・・・もっと場数を踏まなければと反省。しかし何より大事なのが、終了後の質疑応答。ずっとニコニコしていた研究室メンバーもこのときばかりは真剣な眼差し。次々に来る質問に、少々たじたじになりながらも、何とか受け答えすることができたかなーと思います。いくつか、英語が聞き取れなかったり、質問の意図を理解しかねたりして、何度も聞き返してしまいましたが・・・・・・。実際に、発表はすごいよかったけど、質疑応答でいくつか的外れな返答があったよと受け入れ先の先生の言われてしまいました。猛省。とはいえ、多くの出席者におもしろいと言っていただき、ラボに戻った後には様々なディスカッションを交わすことができました。私の伝えたかったこと、アピールしたかった部分、とくに先方にはないであろう研究のアイデアは十分に伝わっていたようで、発表自体は及第点といったところでしょうか(質問が多いということは、伝わったからだと思います)。当面の目標は質疑応答で、満足いくディスカッションをできるようになることですね。

 

およそ1時間かけて発表と質疑応答を終え、その後二ールを中心に、各専門のスタッフとともに様々な事務手続きを行いました。火災等の災害の際の避難経路の説明、研究所の入り方と出方、そのために必要なカードキーとパスワードの準備、実験室の使用上の注意点、知的財産の管理、実験データの管理(どでかいサーバで、研究所単位で一括管理らしい。不正防止策かな)、自分の使用するPCのセットアップと新しいアカウントの準備、インターネットの接続とプリンターの使用準備、持ち込んだ試薬や実験器具の安全性チェックと保存先の選択、試薬や動物資料の廃棄方法の確認、自転車使用の手続きと使用上の注意と管理などなど。さらには、これらについて説明を受け、承認したことを証明する書類の作成と提出。間に昼食を挟んだとはいえ、全部で5時間ほどかけてすべての手続きを終了させました。1階にいる受付のおばちゃんと3階のラボを何度も往復したので、「非常によいエクササイズだね。僕の脂肪が燃えるよ。」と笑いながらずっと付き合ってくれたニールさんには、本当に感謝です。(というか、おばちゃん、早口+なまりで何言っているのかマジでわからない。解説してくれたニール、本当にありがとう。)

 

ちなみに昼食は、食堂で購入したランチを外のテラスに持って行ってみんなで食べます。ランチはバイキング形式の食べ放題で450円ほど(26 DKK)。デンマークの物価を考慮すると格安ですね。ちなみに、デンマークではセブンイレブンで売っているサンドイッチが、だいたい650円です (39 DKK)。まぁ、このサンドイッチ、日本のと違って、中身もパンもしっかりしているから、めっちゃうまいんだけどね。

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↑ ランチ 450円。

 

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↑セブンのサンドイッチ。3種類食べたが、スモークサーモンが入っているものが一番おいしかった。

 

昼食では、みんなで家族の話に。とくに私の妻が、通常、男性の多い変わった職に就いているため、その話でだいぶ盛り上がりました。先方の先生からは、「あなたの奥さんは性差を超えて職についているなんて近代的ね!」と。妻の知らないところでほめられています。デンマークは女性が活躍できる社会にしようという気運が高く、実際に、日本では男性の多い職にも、女性が多数就いています。(もちろん逆パターンも多いそうで。)この研究業界も日本では男性優位ですが、私がお世話になっているラボのトップ(教授相当)は女性ですし、准教授も女性です。というか、技術員含めラボメンバーの8割がた女性です。男のほうが少ない(ちなみにニールは男性です)。

 

食後も事務手続きや書類の手続きを済ませ、その後、先方の先生とこちらで購入する試薬についての検討とこれからの研究計画について相談をしました。だいたいの見通しが立ったところで、「今日は疲れただろうから、 帰って休んでね。あ、もちろん観光するのよ」と言われて帰路につきました。この時点で16時くらいでした。貸してもらった自転車に乗って美しい街の中を走るのは爽快で、ホテルへの5 kmの道のりがあっという間でした。

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↑ 帰る前に撮影した研究所の看板と自転車


借りる際の話によると、デンマークでは自転車の窃盗が横行しているようで、管理には注意するように、できれば路上ではなくホテルの中に駐輪してほしいといわれました。ホテルの方は快く敷地内での駐輪を認めてくれたのですが、念のため、地球ロックができるように帰りがけに鍵を購入。しかし、日本でも感じますが、なぜ自転車屋のおっさんの多くはぶっきらぼうなのか。購入したら、いきなり「コード」というので何のことかと思ったら、自転車の鍵の番号を設定してくれるとのことだったらしい。クレジットカードのPINのことかと思ったじゃないか(絶対に言うわけにはいかない)。

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↑ホテルの駐輪場。自分の自転車以外はすべてホテルのレンタルサイクルでした。

 

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↑ちなみにホテルの中庭

 

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↑ホテルの最寄の自転車屋。ママチャリとかではなく、ほとんどがスポーツバイク。眺めているだけで楽しい。

 

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↑鍵は日本のものとさしたる違いはない

 

帰り着いたら、疲れが一気に出てしまったようで、本来は自転車で走り回りたかったのですが、すぐに眠ってしまいました。考えてみたら、ラボに着いて、発表して、昼食を除いたらずっと動き回っていたのでそりゃ疲れます。主にニールさんのおかげで、1日で研究ができる環境が整ったので、明日から積極的に手と頭を動かして取り組んでいきたいと思います。