デンマーク留学記 ~27日目、夏至祭りにて燃やされる魔女~

本日金曜日の朝には、恒例の全体ミーティングがありました。以前お話した、ひとりひとりが翌週の目標を言うアレです(http://onodasyoui.hatenablog.com/entry/2017/06/11/122320)。ミーティング終了後、研究者や技術員の人たちから、「今日はSummer solstice festival が行われるけど行く?」と口々に言われました。

恥ずかしながらSolsticeという単語を知らなかったため、なんのこっちゃ? と思いつつも、まぁFestival(祭り)なら参加しない理由はないな! と、その祭りのことを詳しく聞いたところ、Summer solsticeとは1年で最も日の出ている時間の長い日、つまりSummer solstice festivalとは夏至を楽しむ祭りだそうです。本日、この夏至祭りに行ってきました。この祭りは、デンマークの至る所行われますが、自分はホテルに最も近い、ニューハウン近くの海辺で行われる夏至祭りに参加しました。

f:id:onodasyoui:20170624044032j:plain↑ これが夏至祭りのメインイベント!

どんなお祭りかというと、

夜9時ごろに人々が海辺や川辺に集まって、
陽気な唄を歌いながら、
海や川に浮かべた山のような薪と
その天辺に縛り付けた等身大の魔女に、
火を焚き付けて、
魔女が業火に焼かれて苦しんでいる
その様を眺めて楽しむ祭りです。


こう書くとだいぶ猟奇的ですね。

 

f:id:onodasyoui:20170624044106j:plain↑ 魔女が焼かれています。水面に映る炎が美しい。

f:id:onodasyoui:20170624044824j:plain↑ ミュージシャンを招待しており、みなが歌う唄を生演奏で盛り上げてくれます。歌手もいます。

 

簡単に解説しますと、この夏至祭りはデンマーク語でSankthansaften(サンクトハンス・アフテン)と言われ、「聖ハンスイブ」という意味になります。デンマークでは6月24日が「聖ハンス(洗礼者ヨハネ)の日」(Sankthansdag)であるので、その前日の6月23日の夜が聖ハンスの日のイブになるわけですね。この記念すべき日である聖ハンスイブに魔女を焚き上げる理由には「魔」を遠ざけることにあります。

北欧の民間信仰によると、デンマークではヴァイキングの時代から、1年で日の最も長い夜、つまり夏至の日の夜に「魔」が活発になると信じられてきました。それが発展して、1600~1800年代ごろに、ドイツのブロッケン山で夏至の日に魔女が会議を開くと考えられるようになりました。魔女狩りの時代ですね。そして、その魔女が山から町に来るのを防ぐために、夏至の日に魔女を燃やす習慣ができたとされています。また、もっと幅広く捉えると、「魔」の象徴である魔女を燃やすことで悪霊などの「魔」全般(日本で言う厄や災難)を追い払い、夏や秋の収穫を祈念するための儀式でもあると考えられています。つまり、自らに降りかかる災いを避けるために、悪しきものを火で燃やして消し去ってしまおうという、世界中に比較的よくあるタイプの祭りです。

ちなみに、おとなりのスウェーデンでは「家や車を白樺の枝で飾り付け、メイポール(夏至柱)といわれる、花や葉で飾り付けられたポールを立てます。その周りで歌ったり踊ったりしてお祝いします。」とのこと(引用:http://samfunddanmark.blog.so-net.ne.jp/2010-06-30)。こっちはだいぶ穏やかな印象を受けます。

実際に参加した日は、若干小雨も降り、風も強く、非常に寒い中行われたためか、遠く離れていても、焚き上がる炎の強い熱気を感じました。その熱を肌で受けたので、自分についている魔も追い払えたことでしょうし、これから1年間、災いが降りかからないと期待したいと思います。まずは、無事にこの留学を終えて日本に帰れることを祈ります。